Last Updated on 2026年8月2日 by おおつか内科・消化器内科・IBDクリニック
連日厳しい暑さが続く8月は、1年の中で最も食中毒や急性胃腸炎が発生しやすい時期です。
「冷たいものを飲みすぎてお腹を壊したのかな?」 「昨晩食べたものが当たったかもしれない…」
このような急な腹痛や下痢、吐き気に襲われたとき、単なる夏の疲れと軽く考えて放置してしまうのは危険です。夏場の胃腸障害は、暑さと相まって、急速に体力を奪ってしまうリスクがあります。
今回は、8月に食中毒・急性胃腸炎が増える理由や注意すべき症状について、消化器内科の視点から分かりやすく解説します。
なぜ8月に食中毒・急性胃腸炎が増えるのか?
年間を通して起こる急性胃腸炎の多くはウイルス(ノロウイルスなど)が原因ですが、真夏の8月に急増する食中毒・胃腸炎の多くは細菌(カンピロバクター、サルモネラ菌、腸管出血性大腸菌など)が原因となります。
1. 気温30℃を超えると細菌が爆発的に繁殖する
食中毒を引き起こす細菌の多くは、気温30℃〜40℃、高湿度の環境で最も活発に増殖します。冬場に多いウイルス性胃腸炎とは異なり、夏場は食べ物に付着した細菌が室内や屋外で増殖し、それを口にすることで発症するケースが急増します。
2. バーベキューや作り置き食品の落とし穴
夏休みのバーベキューやイベントで生肉(特に鶏肉)を触った箸で他の料理を食べたり、加熱不足の肉を食べたりすることで感染するケースが目立ちます。また、火を通したから大丈夫とカレーや煮物を室内に常温放置することも、細菌が繁殖する大きな原因になります。
3. 冷えやストレスによる胃腸の免疫力低下
冷房の効いた室内と屋外の激しい寒暖差や、冷たい飲み物・かき氷などの摂りすぎは、胃腸の働きを弱めます。胃腸の免疫機能が低下していると、少量の細菌やウイルスが入ってきただけでも強い症状が出やすくなります。
単なる水では足りない?急性胃腸炎における経口補水の重要性
食中毒や急性胃腸炎にかかった際、最も警戒しなければならないのが脱水症です。下痢や嘔吐が起こると、体内から大量の水分と電解質(塩分やカリウムなど)が失われてしまいます。
ここで非常に重要なのが、正しく経口補水を行うことです。
なぜ水やお茶ではダメなのか?
激しい下痢や嘔吐をしているときに水やお緑だけを大量に飲むと、血液中の塩分濃度が薄まり、体が余計に水分を排出しようとする自発的脱水という現象が起きます。これにより、脱水症状がかえって悪化したり、足がつる・めまいがするなどの症状が現れたりします。
経口補水液(OS-1など)が推奨される理由
経口補水液は、水に電解質(ナトリウムなど)と糖分が絶妙なバランスで配合されています。このバランスにより、腸管から水分と塩分が素早く・効率よく体に吸収される仕組みになっています。これは「飲む点滴」とも呼ばれ、軽度〜中等度の脱水症に対して非常に高い効果を発揮します。
効果的な経口補水のやり方とコツ
- 少量ずつ、ちびちび飲む: 吐き気があるときに一気に飲むと、胃が刺激されて再び吐いてしまいます。一口ずつ、5分〜10分おきに「ちびちび」と飲むのがコツです。
- 常温で飲む: 冷たすぎる飲み物は胃腸を刺激し、下痢を悪化させることがあります。できるだけ常温で飲みましょう。
- スポーツドリンクとの違いを理解する: スポーツドリンクは経口補水液に比べて砂糖が多く、塩分が少なめです。予防や軽度の喉の渇きには良いですが、下痢や嘔吐が続いているときの補水には、電解質濃度が高い「経口補水液」を選びましょう。ですが、スポーツドリンクの方がクエン酸やアミノ酸が含まれており、すっきりとした甘さで飲みやすい味であることも事実です。ほとんどの胃腸炎は軽症であることが多いので、「ちょっとお腹の調子がおかしいかな?」くらいであれば、スポーツドリンクでも十分かなとは思います。
夏の胃腸炎は我慢せず消化器内科へ
急性胃腸炎の多くは数日で自然に回復しますが、2~3日で症状がひどくなっている場合や以下の症状がある場合には早めに医療機関を受診してください。
・強い腹痛
・38℃以上の発熱
・1日10回以上の下痢
・血便
特に高齢の方やお子様、持病をお持ちの方は脱水症状が急速に進行しやすいため、早めの受診が極めて重要です。さらに2週間以上下痢が持続している場合は炎症性腸疾患の可能性もありますので、大腸カメラを検討する必要もあります。
自宅での注意点:市販の下痢止めは安易に飲まないで!
つらい下痢を止めようと、自己判断で市販の下痢止め薬を飲むのは避けてください。下痢は、体内に侵入した細菌や毒素を外へ排出すようとする体の防御反応でもあります。薬で無理に止めてしまうと、腸内に毒素が留まり、症状が長引いたり悪化したりすることがあります。
ご家庭でできる!夏の食中毒予防 3つの鉄則
最後に、日常でできる食中毒の予防法をおさらいしましょう。
- 【つけない】丁寧な手洗いと器具の消毒 調理前、食事前、生の肉や魚を触った後は、石鹸で丁寧に手を洗いましょう。包丁やまな板も肉用と野菜用で分けるか、使用ごとに熱湯消毒するのが有効です。
- 【増やさない】持ち帰りや作り置きはすぐに冷蔵・冷凍 購入した食品や調理後の料理は常温で放置せず、すぐに冷蔵庫(10℃以下)に入れましょう。
- 【やっつける】中心部までしっかり加熱 加熱して食べる食品は、中心部の温度が75℃で1分以上加熱するのが基本です。特にバーベキューなどでは肉の生焼きに十分注意してください。
お腹の不調・夏の体調不良は当院にご相談ください
胃腸炎は、経口補水だけでなく、お薬でしっかりと症状を抑えることが重要です。「急なお腹の痛みで動くのがつらい」「気持ち悪くて経口補水液も受け付けない」といった場合は、胃腸炎以外の病気の場合もありますので、大腸カメラや血液検査の必要性も含めて無理をせずご相談ください。

日本消化器病学会 専門医
日本消化器内視鏡学会 専門医
日本消化器内視鏡学会 上部消化管内視鏡スクリーニング認定医
日本消化器内視鏡学会 下部消化管内視鏡スクリーニング認定医
日本炎症性腸疾患学会
日本内科学会 認定内科医
