炎症性腸疾患(IBD)

炎症性腸疾患(IBD)

消化管に炎症を起こす炎症性腸疾患の中でも、近年患者数が増加傾向にあるのは潰瘍性大腸炎とクローン病です。最近は、ベーチェット病患者さんも大腸カメラをやってみると腸の病変が見つかることも増えています。原因がまだよくわかっていないため根治に導く治療法がなく、難病指定されていますが、炎症を抑える治療を続けて厳密にコントロールすることでよい状態を保つことも可能です。正確な鑑別が不可欠ですので、疑わしい症状がありましたら必ず消化器専門医を受診して適切な治療をできるだけ早く受けてください。

潰瘍性大腸炎

  • 便に血がつく
  • 便に粘液がつく
  • お腹が痛い
  • 下痢が続く
  • 大腸の粘膜に炎症が起こる病気です。
  • 粘液と血が混じった便(粘血便)、下痢、お腹の痛みなどが多い症状です。
  • 治療しないと、症状は良くなったり悪くなったりを繰り返します。
  • 原因ははっきりわかっていませんが、治療により症状がない状態を維持し、病気がない人と同じ生活を出来るようにすることが可能になっています。
  • 小児から高齢者まで幅広い患者さんを見てきました。
  • 我慢せずに受診してもらえれば、より早く診断にたどり着き、治療を開始出来ますので、この病気の不安が少しでもあれば、一度来院してください。
  • 難病法の基づく指定医療機関ですので、費用含めて一緒に相談させて頂きます。

検査・診断

  • 細菌やウイルスによる胃腸炎との判別が重要ですが、大腸カメラでほとんどの症例で診断が可能です。
  • 我慢せずに受診してもらえれば、より早く診断にたどり着き、治療を開始出来ます。

治療

現時点で、根本的な治療はありませんが、お薬により炎症をコントロールし、通常の生活を多くの患者さんが送ることが可能になっています。

クローン病

症状

  • お腹が痛い
  • 下痢が続く
  • 体重が増えない、減ってきた
  • 微熱が続いている
  • お尻が痛い
  • 若いときから痔で困っている
  • 口から肛門まで全ての消化管に炎症が起こり得ますが、小腸の終わりから大腸にかけての部位が好発部位です。
  • 原因ははっきりしていませんが、栄養療法だけで良くなることも多くあります。
  • 20歳代に発症することが多いとされてきましたが、高齢まで症状が軽く気付かないことも多くあります。
  • 症状は腹痛、下痢、発熱、体重減少、関節痛や肛門痛などが多いです。
  • 何らかの治療をしないと、腸の炎症が続き、腸へのダメージが溜まっていきます。
  • ダメージが溜まることで、腸は狭くなったり、硬くなったりします。
  • 穴が開いたり、腸同士や腸と他の臓器(皮膚や膀胱)とトンネルを作ってしまうこともあります。

検査

  • 多くの場合で胃カメラと大腸カメラにより診断することが可能です。
  • しかし、クローン病では多くの場合で小腸に病変があるため、小腸まで検査をする場合は、CT、MRI、小腸カプセル内視鏡なども行う必要があります。

腸管ベーチェット病

  • ベーチェット病の中でも腸に病変が出来る場合があります・打ち抜き様潰瘍と呼ばれる特徴的な内視鏡所見が診断するうえで重要です。
  • 強い腹痛で発症することもありますが、症状はないけど大腸カメラをやってみると偶然見つかる方もいます。
  • ベーチェット病は腸に穴が開いて手術になってしまうと非常にやっかいですので、お腹の症状がない方も大腸カメラを受けることをおすすめします。

IBDの治療

① アミノサリチル酸(5-ASA)製剤

  • 大腸の炎症を抑えるお薬で、潰瘍性大腸炎治療の基本薬になります。
  • 潰瘍性大腸炎の7割の患者さんはこのお薬で症状がよくなると言われています。
  • 飲み薬だけで効果が不十分な場合は、肛門から直接お薬を入れる坐薬などを併用します。
  • 潰瘍性大腸炎に対しては最も古くから使用されているお薬で、長期的な安全性も高いです。
  • お薬が体に合わずアレルギー症状が出て、内服が継続出来ない場合もあります。

② 局所ステロイド製剤

  • ステロイドは短期間の使用であれば、炎症を抑える薬として非常に有用です。
  • ステロイドを肛門から直接注入するお薬です。
  • 経口剤と比べると副作用は少なく、安心して使用出来ます。

③ 経口ステロイド製剤

  • 局所製剤と比べると、副作用の頻度が高くなりますので、短期間の使用にとどめます。
  • ステロイドを止められなかった患者さん、だらだら使用した患者さんは、わたしの患者では一人もいらっしゃいません。
  • ステロイドが効いても効かなくても、必ず短期間の使用で終了します。
  • ステロイドでも上手く症状をコントロール出来ない場合を難治性と呼びます。
  • その場合には、免疫調製剤や生物学的製剤などを追加します。

④ 血球除去療法

  • 透析の要領で、機械に血液を通過させ、炎症細胞を選択的に吸着・除去し、血液を体内に戻します。
  • 1週間に1-2回、合計10回が基本になります。
  • 他の透析クリニックと連携して治療します。

⑤ 生物学的製剤

現在、保険診療で使用出来る生物学的製剤は以下になります。

  • エンタイビオ
  • カログラ
  • ステラーラ
  • ゼルヤンツ
  • ジセレカ
  • レミケード
  • シンポニー
  • ヒュミラ

投与方法、投与間隔、効果が出るまでの時間、安全性など少しずつ違いますが、わたしはいずれのお薬も使い慣れたお薬であり、全て使用可能です。
そのときの病気の勢いや患者さんのお困りの程度に応じて適切な薬剤を相談、提案させて頂きます。

⑥ 栄養療法

  • クローン病では栄養療法で炎症が改善することも多くあります。
  • 栄養療法をするために日常生活が壊れてしまっては意味がないので、日常生活で可能な栄養両方を相談させてもらいます.