インフルエンザワクチンQA インフルエンザワクチンに関する疑問にお答えします
インフルエンザは毎年冬に流行する感染症で、高熱や関節痛、咳などの症状を引き起こします。
重症化すると肺炎や脳症などの合併症を起こすこともあり、命に関わることもあります。
インフルエンザの予防には、手洗いやマスクの着用などの基本的な対策が重要ですが、インフルエンザワクチンの接種も有効な方法の一つです。
しかし、インフルエンザワクチンについては、様々な疑問や誤解があります。
そこで、インフルエンザワクチンに関するよくある質問とその回答を紹介します。
目次
- 1 Q. ワクチンは1回接種でよいでしょうか?A. 13歳以上の方は、原則として1回接種で十分です
- 2 Q. ワクチンの効果、有効性について教えてください。A. インフルエンザウイルスの感染を予防する効果はありません
- 3 Q. 昨年ワクチンの接種を受けましたが今年も受けた方がよいでしょうか?A. 毎年接種した方が良いです
- 4 Q. インフルエンザワクチンの接種はいつ頃受けるのがよいですか?A. 思い立ったが吉日です
- 5 Q.インフルエンザに感染しましたが、ワクチンは接種した方がよいでしょうか?A.他のインフルエンザウイルスから守るためには接種した方がよいです。
- 6 Q. インフルエンザワクチンの接種によって、インフルエンザを発症することはありますか?A. ありません。
Q. ワクチンは1回接種でよいでしょうか?
A. 13歳以上の方は、原則として1回接種で十分です
健康な成人の方や基礎疾患のある方を対象に行われた研究から、インフルエンザワクチン0.5mLの1回接種で、2回接種と同等の抗体価の上昇が得られるとの報告があります。
Q. ワクチンの効果、有効性について教えてください。
A. インフルエンザウイルスの感染を予防する効果はありません
インフルエンザにかかる時は、インフルエンザウイルスが口や鼻あるいは眼の粘膜から体の中に入ってくることから始まります。
体の中に入ったウイルスは次に細胞に侵入して増殖する状態を「感染」といいます。
残念ながら現行のワクチンはこれを完全に抑える働きはありません。
ウイルスが増えると、数日の潜伏期間を経て、発熱やのどの痛み等のインフルエンザの症状が出現した状態を「発病」といいます。
インフルエンザワクチンには、この「発病」を抑える効果が一定程度認められていますが、麻しんや風しんワクチンで認められているような高い発病予防効果を期待することはできません。
発病後、多くの方は1週間程度で回復しますが、中には肺炎や脳症等の重い合併症が現れ、入院治療を必要とする方や死亡される方もいます。
これをインフルエンザの「重症化」といいます。
特に基礎疾患のある方や高齢の方では重症化する可能性が高いと考えられています。
インフルエンザワクチンの最も大きな効果は、「重症化」を予防することです。
国内の研究によれば、65歳以上の高齢者福祉施設に入所している高齢者については34~55%の発病を阻止し、82%の死亡を阻止する効果があったとされています。
つまり、コロナウイルスワクチンもそうでしたが、『君は大丈夫かもしれない。でも君にとって大切な人、誰かにとって大切な人は大丈夫じゃないかもしれない』ということが重要なことです。
また、6歳未満の小児を対象とした2015/16シーズンの研究では、発病防止に対するインフルエンザワクチンの有効率は60%と報告されています。
インフルエンザ発病防止に対するワクチン有効率が60%とは、ワクチンを接種せず発病した方のうち60%は、ワクチンを接種していれば発病を防ぐことができたということになります。
決して、60%予防出来るという意味ではありませんのでご注意を。
現行のインフルエンザワクチンは、接種すればインフルエンザに絶対にかからない、というものではありません。
しかし、インフルエンザの発病を予防することや、発病後の重症化や死亡を予防することに関しては、一定の効果があるとされています。
Q. 昨年ワクチンの接種を受けましたが今年も受けた方がよいでしょうか?
A. 毎年接種した方が良いです
インフルエンザウイルスは毎年変異する可能性があり、昨年のワクチンで得られた免疫が十分に効果を発揮しない場合があります。
そのため、インフルエンザワクチンは、そのシーズンに流行することが予測されると判断されたウイルスを用いて製造されています。
このため、昨年インフルエンザワクチンの接種を受けた方であっても、今年のインフルエンザワクチンの接種を検討して頂く方が良いです。
Q. インフルエンザワクチンの接種はいつ頃受けるのがよいですか?
A. 思い立ったが吉日です
インフルエンザは例年12月~4月頃に流行し、1月末~3月上旬に流行のピークを迎えていましたので、12月中旬までにワクチン接種を終えていれば安心でした。
しかし、今年は10月の時点で既に流行が始まっており、多数の学級閉鎖が東灘区内でも出ていますので、早めの接種が推奨されています。
また来週、と思っていたらインフルエンザウイルスに感染したりするのが人生です。
コロナウイルスワクチンと違ってインフルエンザワクチンは流通に問題もありませんので、ぜひ思い立った日に接種してください。
Q.インフルエンザに感染しましたが、ワクチンは接種した方がよいでしょうか?
A.他のインフルエンザウイルスから守るためには接種した方がよいです。
2023年はダラダラとインフルエンザウイルスが流行していたため、早めに流行が始まり、今シーズンに入ってから既に感染した方も少なくないと思います。
インフルエンザウイルスはシーズンを通してみると、複数のウイルス型が流行することがあります。
さらに、今年のように2024年になってもだらだらインフルエンザウイルスが流行するかもしれないことを想定すると、複数のウイルス型をカバーしておく必要もあるでしょう。
こうした理由から、既にインフルエンザウイルスに感染したワクチン未接種者の方も、ほかのインフルエンザウイルスから守るために、ワクチンを接種することがすすめられます。
Q. インフルエンザワクチンの接種によって、インフルエンザを発症することはありますか?
A. ありません。
インフルエンザワクチンは不活化ワクチンです。
不活化ワクチンは、インフルエンザウイルスの感染性を失わせ、免疫をつくるのに必要な成分を取り出して作ったものです。
したがって、ウイルスとしての働きはないので、ワクチン接種によってインフルエンザを発症することはありません。
しかし、ワクチン接種後に発熱や筋肉痛などの副反応が起こることがあります。
これは、ワクチンに含まれるウイルス成分に対して体が免疫反応を起こしている証拠であり、インフルエンザにかかったわけではありません。
副反応は通常1~2日で治まります。
ただ、ワクチン接種後すぐにインフルエンザに感染する可能性はあります。
ワクチン接種後に免疫が十分にできるまでには約2週間かかりますので、その間にインフルエンザウイルスに感染した場合は、発病することがあります。
実際にインフルエンザワクチンを接種した直後にインフルエンザウイルスに感染したけど?っていう方もいらっしゃいますよね。
単なる偶然です。
そのため、ワクチン接種後も手洗いやマスクの着用などの感染予防対策を続けることが大切です。
以上、インフルエンザワクチンの接種に関するよくある質問と回答でした。インフルエンザワクチンは完全な予防法ではありませんが、発病や重症化を減らす効果があることは確かです。自分や家族の健康を守るためにも、インフルエンザシーズン前に早めの接種を検討してみてください。
日本消化器病学会 専門医
日本消化器内視鏡学会 専門医
日本消化器内視鏡学会 上部消化管内視鏡スクリーニング認定医
日本消化器内視鏡学会 下部消化管内視鏡スクリーニング認定医
日本炎症性腸疾患学会
日本内科学会 認定内科医