炎症性腸疾患(IBD)ってなに?

今回はクリニック名にも入っているIBDについて説明します。

腹痛や下痢が続いていて、インターネットで調べると潰瘍性大腸炎やクローン病というワードにたどり着いた方も少なくはないと思います。

インターネットが情報過多になっていることはIBDでも同じです。

お家のご近所の病院でIBDかもと言われた方もいるかもしれません。

この記事で少しでも情報が整理できればと思います。

IBDの最重要ポイントは診断

IBDとは、腸が炎症を起こす病気のことで、潰瘍性大腸炎、クローン病や腸管ベーチェット病を含む疾患群です。

なぜ腸が炎症を起こすのかは、まだはっきりわかっていませんが、遺伝や生活習慣、腸の中にいる細菌などが影響していると思われます。

IBDの人の免疫システムは、正常に働かなかったり、うまく調節できなかったりすることがわかっています。

特に、腸の中の細菌と免疫システムの関係は、最近の研究でよく分かってきました。

以前はIBDと言えば、潰瘍性大腸炎とクローン病という二種類の病気を指していましたが、現在はより多くの疾患を含む疾患群となっています。

同じグループなので、どれも似ているようですが、実は全て全く違う病気で、治療方法も違います。

そのため、最初の診断というところが非常に重要になってきます。

治療目標は治癒ではなく寛解維持

IBDは、今のところ完治できない病気ですので、治療の目的は、腸の炎症をなくしたり、少なくしたりすることです。

それでも、すぐに落ち込まないでください。

治癒はしなくても、良い状態であることを寛解と言いますが、寛解を維持することは多くの方で可能です。

治療の段階は大きく二つに分けられ、寛解導入寛解維持です。

寛解導入・・・腸が炎症を起こしているときに、早く炎症を止めることです

寛解維持・・・腸の炎症がなくなったり、弱くなったりしたときに、また炎症が起こらないようにすることです。

治癒が出来ないと言われると心配される方も多いですが、現在は多くの治療選択肢が出来たため、多くの方で寛解維持することが出来て、発症する前と同じ生活を送ることが出来るようになっています。

IBDの治療は常に総力戦

IBDの中でも患者数の最も多い潰瘍性大腸炎では、腸の炎症を止めるために、5-ASAという薬、免疫調製剤やステロイドを使ってきました。

これらのお薬で約7~8割の方が寛解維持出来ていたのですが、どうしても上手く行かない場合もあったため、私たちも患者さんも悩んでいました。

しかし、腸の炎症を抑える薬が新しくなって、治療が変わりました。

一つのきっかけは、生物学的製剤というもので、長く使うことで、長期的な予後を改善させることが出来るようになりました。

現在は、症状の改善だけではなく、内視鏡的な改善、最終的には組織レベルでも炎症のない状態を達成することで病気の悪化を防ぐことが目標にもなっています。

さらに、生物学的製剤の使い方や、いつ使うかについても、研究が進んでいますし、新しい薬もたくさん作られています。

今は多くの方で寛解維持出来ていると言いましたが、あくまで存在する全ての治療薬を使いこなしてこその話ですので、私たちが常に治療薬の知識を最新のものにアップデートする必要です。

それぞれの方に合った薬を、適切なタイミングで使うことが、とても大切です。

そして治療の前に重要なことは適切な診断ですが、ここだけは患者さんにがんばってもらう必要があります。

そうです、大腸カメラです。

しんどいイメージも多いとは思いますが、IBDの専門家として、技術的なことはもちろん楽に受けて頂くための薬剤も使いながら、出来るだけ早く診断と治療に繋げることが出来ると自信を持っています。

インターネットで色々調べていて自分がIBDかもと心配な方は早めの検査で心配を取り除きましょう。

胃も腸も敏感な臓器ですので、心配が症状をさらに強くしている可能性もあります。

治療薬の選び方は常にオーダーメイド

いろいろな治療法が使えるようになっていて、腸の炎症をなくすことだけでなく、体や腸の免疫の働きを正常にすることに注目しています。

今も、新しい薬がどんどん作られていて、治療の方法はますます多くなっています。

治療法を選ぶポイントは3つあります。

  1. 投与経路
  2. 効果
  3. 安全性

1.投与経路

長く続けるお薬ですので、使いやすいかどうかは非常に重要で、便利で快適なほうがいいです。

坐薬もあって、高い効果が期待出来ることもありますが、人によって好みは違うと思います。

口から飲む薬のほうがいい方もいれば、毎日の内服よりも数週間に1回の注射が良い方もいます。

2.効果

3.安全性

効果と安全性は常に一緒に考える必要があります。

当然、効果が高くて安全性が高いお薬が一番ですが、そういうわけにはいきません。

生物学的製剤は、効果が強いですが、効果がなくなったり、薬に対する抗体ができたりすることがあります。

そのときに、免疫調節薬という薬を一緒に使うと高い効果を発揮する場合もありますが、お薬によって違います。

治療効果が出るまで時間がかかるけど、安全性の高いお薬を選べるかどうかは、病気の勢いにもよりますので、患者さんの状態をみて治療薬を提案させて頂きます。

また、治療薬は増えましたが、使う順番やどのお薬がどんな患者さんに効くのかといったところはまだ分からないところが多く、real worldでの私たちの使用経験によるところも多いです。

そのため、一つ一つ患者さんと慎重に治療薬を選ぶことが大事だと考えています。

長いお付き合いになりますが、よろしくお願いします。

IBDは、今のところ完治できない病気ですので、長く治療を続けなければなりません。

ですので、一度診断すると、わたしとは長いお付き合いになりますので、よろしくお願いします。

しかし、長く良い状態を続けることもできますので、すぐに大きな心配をする必要もありません。

患者さんの病気の状態をよく見て、患者さんに合った治療を選ぶことが重要です。

治療をする前には、正しい診断が必要です。

他の病気と間違えないように、注意しなければなりませんし、患者さんの病気の状態を正しく理解して、その状態に合った治療をしなければなりません。

治療の考え方も年々少しずつ変わってきていますので、常に新しい治療を知っておく必要があります。

これからも少しずつIBDについて情報を発信していければと思います。