便潜血検査ってなに?
便潜血検査(FOBT)って検診では提出するものの、結局何なん?どうしたらいいの?という方も少なくないと思います。
今回は、FOBTについて解説していきます。
FOBTは大腸がんやその前駆病変である腺腫からの微量な出血を検出するための重要なスクリーニングツールです。
この検査は、がんを早期に発見し、治療による死亡率の減少を目指します。
また、がんの前駆病変である腺腫の発見と切除により、がんの罹患率を減少させることが可能です。
目次
化学法と免疫法
FOBTには化学法と免疫法の2種類があります。
- 化学法:1960年代に開発されたグアヤック濾紙法で、食事制限が必要
- 免疫法:抗原抗体反応を利用して高感度にヘモグロビンを検出
免疫法FOBTは、特定のヘモグロビンの抗原に対する抗体を使用して、人間の血液中のヘモグロビンのみを特異的に検出することができます。
これにより、食事由来のヘモグロビンや動物の血液が誤って検出されることがなく、より正確な結果を得ることができます。
現在、日本で市販されているFOBT試薬はすべて免疫法に基づいており、測定の自動化やヘモグロビン濃度の測定が可能です。
有効性のエビデンス
無作為比較試験(RCT)により、化学法FOBTの死亡率低下効果が証明されています。
特にミネソタ研究では、逐年群での死亡率が33%低下しました。
免疫法FOBTの有効性はRCTでは証明されていませんが、日本を中心とした症例対象研究やコホート研究でその効果が示されています。
FOBTは、大腸がんの早期発見と予防において非常に有効な手段であり、今後もその重要性は高まることでしょう。
検査方法の進化とともに、より多くの人々がこの検査を受け、大腸がんによる死亡率のさらなる低下を実現することが期待されます。
FOBTは、簡便で非侵襲的な方法でありながら、大腸がんのスクリーニングにおける重要な役割を果たしています。
この検査により、無症状の個人でも大腸がんのリスクを評価し、必要に応じて追加的な診断手順を踏むことができます。
スクリーニング間隔
FOBTのスクリーニング間隔は、大腸がんの早期発見において非常に重要です。
検診のタイミングとその効果
FOBTの検診は、毎年または2年に1回行うことが推奨されています。
これは、過去の研究で毎年または隔年での検診が大腸がんの死亡率を低下させることが示されているためです。
3年ごとの検診も一定の効果があるとされていますが、それ以上の長期間にわたる効果についてはまだ明らかになっていません。
この間隔で繰り返すこともまたFOBTによる大腸がん検診プログラムで重要なことの一つです。
感度と特異度
FOBTの感度とは、実際にがんがある場合に、そのがんを検出できる確率のことです。
一方、特異度とは、がんがない場合に正しくがんがないと判定できる確率です。
FOBTの感度は、1日法で約30~56%、2日法で約83~92%、3日法でも約83~92%と報告されており、特異度は約97~98%と非常に高いです。
現在、感度が高い2日法が主に採用されています。
スクリーニングの継続性
毎年または2年ごとにFOBTスクリーニングを継続することで、全体としての感度を高めることができます。
これは、一度の検診で見逃されるかもしれないがんを、次の検診で発見できる可能性があるためです。
前臨床期の管理
前癌状態である腺腫が、がんに進行する前の期間を前臨床期と呼びます。
この期間は約5~7年とされており、1回の検診でがんがないと判定されても、この期間内に定期的に検診を受け続けることが重要です。
これにより、がんが発生しても早期に発見し、治療することが可能になります。
以上の点から、FOBTスクリーニングの間隔を適切に設定し、定期的に検診を受けることは、大腸がんの早期発見と予防において極めて重要です。
判定結果の解釈
陰性
両方の検体で陽性反応が見られなかった場合、つまり2つの検体が共に陰性であった場合にのみ、「陰性」と判定されます。これは、その時点で大腸からの出血が検出されなかったことを意味します。
要精検
便潜血検査で、提出された2つの検体のうち1つでも陽性反応が見られた場合、「要精検」と判定されます。
この結果は、大腸に何らかの出血がある可能性を示しており、さらに詳しい精密検査を受ける必要があります。
1個陰性だったから様子見でダメですか?と聞かれることもありますが、ダメです。
検診はがんを拾い上げることが目的ですから、1回でも陽性になったという結果はどうやっても消えませんので、きっちり精密検査を受けてください。
精密検査
「要精検」と判定された場合、再度の便潜血検査を行う必要はありません。
代わりに、全大腸内視鏡検査が第一選択として推奨されます。
ここに関しては、別の記事を参照ください。
大腸カメラによる大腸がん検診で命を守ろう (otsuka-cl.com)
今後の展望
大腸がんは世界中で発生率が高いがんの一つであり、早期発見と治療が生存率を大きく改善する鍵となります。
FOBTは、この目的を達成するための効果的なツールであり、今後も多くの国でのスクリーニングプログラムにおいて中心的な役割を担うことが予想されます。
個人的には大腸カメラによる大腸がんスクリーニングが普及してほしいとは思っていますが、簡便さと気軽さの点ではFOBTに軍配があがります。
少なくとも、便潜血検査で精密検査を指示された方は早めの受診をオススメします。
日本消化器病学会 専門医
日本消化器内視鏡学会 専門医
日本消化器内視鏡学会 上部消化管内視鏡スクリーニング認定医
日本消化器内視鏡学会 下部消化管内視鏡スクリーニング認定医
日本炎症性腸疾患学会
日本内科学会 認定内科医