大腸カメラによる大腸がん検診をオススメ
大腸がんで毎年5万人も亡くなってます
今回は、大腸カメラによる大腸がん検診の重要性についてお話させて頂きます。
国立がんセンターの報告によると、大腸がんの5年生存率は70.2%、毎年5万人以上の患者さんが亡くなっています。
消化器の中でも胃腸を専門にしてきた私からすると、毎年5万人も亡くなるというのはあまりにもったいない話で、理解に苦しみます。
大腸がんの5年生存率を病気の段階別でみると、以下の通りでした。
5年生存率
ステージ1 92.8 %
ステージ2 67.2 %
ステージ3 41.3 %
ステージ4 6.3 %
ステージ1が最も初期段階の大腸がんですが、90%以上で治すことが可能です。
一方で、ステージ2では70%以下に大きく低下しています。
ここから、早期に発見することがいかに重要な病気であるかということがわかります。
大腸カメラで早期発見
がんの中には早期の発見が非常に難しいがんも多くありますが、大腸がんはその前の段階の良性ポリープの状態でも早期発見が出来て、その方法が大腸カメラです。
大腸がん検診といえばまずは便潜血検査で、40歳以上の人が対象で、1年に1回受診することが勧められています。
便潜血検査は便に血液の成分が混ざっていないかどうかを調べる検査です。
便潜血検査でひっかかった場合に、より詳細に調べるための精密検査を行いますが、それが大腸カメラですが、もっと早期に見つけて欲しいというのがわたしの願いです。
ちなみに私は現在41歳、大腸カメラ歴は2回ですが、みなさん早すぎると思いませんでしたか?
実は、初回の大腸カメラが30歳でもそこまで早すぎではありません。
潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患は10代もしくはそれ以下でも発症しますので、症状のある方では10代でも積極的に検査を奨めています。
下に年齢階級別の大腸がんになる人の割合をお示しします。
年齢別でみてみると、30~40歳頃から上昇傾向になっていることがわかるでしょうか?
40歳を過ぎたあたりからはさらに急激に上昇してきますので、これが40歳以上で対策型大腸がん検診が奨められている理由で、定期的に大腸がん検診を受けて、早期発見と早期治療することが大切です。
大腸がんは早期では無症状のことが多く、症状が出た頃には進行癌ということも珍しくありません。
そのため、大腸がんを早期に発見するために、みなさんにはせめて40歳を過ぎたら一度は大腸カメラを受けて頂ければと思います。
アメリカでは大腸カメラによる検診が当たり前
しかし、大腸カメラのハードルが高いというみなさんの気持ちも分かります。
やはり便を提出するだけの便潜血検査と比較すると体に負担のかかる検査ですし、偶発症の危険性もまったくのゼロではありません。
便潜血陽性が指摘されても、大腸カメラを受けずにほったらかしにする方が多いことも日本では問題となっています。
受けたくない理由としては、
・恥ずかしい
・痛そう
・前処置がしんどそう
・症状はないからまだいいと思う
・便潜血は陰性だったから大丈夫
といったところでしょうか。
わたしたち大腸を専門としている内視鏡医の技術は自信を持って提供出来るレベルにありますし、当院では痛くならないような薬剤選択や不安の多い検査前の下剤などに関してもみなさんと相談しながら決めていきます。
アメリカは日本より人口が明らかに多いですが、大腸がん死亡者数が日本より少ないってご存じでしたか?
色々な理由があると思いますが、理由の1つとして大腸カメラによる大腸がん検診の効果も考えられます。
しかも、2018年時点での大腸がん検診受診率は66%で、10年以内に大腸カメラを受けたことのある方が90%以上を占めており、大腸カメラの受診率が非常に高いことが分かります。
目指せ大腸がん検診受診率80%
さらに、この状況で大腸がん検診の受診率80%を目指していると言われており、アメリカは本気です。
アメリカを本気にさせている根拠の1つがNational Polyp Studyでしょう。
Colonoscopic Polypectomy and Long-Term Prevention of Colorectal-Cancer Deaths | NEJM
この研究では色々なメッセージがありますが、大腸カメラで腺腫性ポリープ(大腸がんになる前の良性のポリープ)を切除することで、大腸がんによる死亡を53%減らすことが出来るというものでした。
大腸ポリープを切除することで大腸がんの発症や大腸がんによる死亡を予防することはもちろん、その経験をきっかけに自分の健康に本気で目を向け始めるというメリットもあります。
症状はないのに自分の体にがんになる可能性のある病気があったと思うとゾッとしますよね。
日本では、便潜血検査ですら50%以下であり、いかに対策が不十分であるか分かります。
また、10代・20代の方でも、下痢や腹痛などの何気ない症状で大腸カメラをしてみると、わたしが専門としている潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患が見つかることもあります。
病気が見つかっても見つからなくても、まずは受診して頂ければみなさんに何かしらの安心を提供出来ると思いますので、是非お待ちしています。
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