新型コロナワクチンの定期接種の考え方
目次
新型コロナによる死者は年間3万2000人でインフルの15倍
2023年5月から2024年4月の1年間における新型コロナウイルスの死者数が3万2576人と、同時期のインフルエンザウイルスの死者数2244人の約15倍に上ったことが分かりました
厚生労働省の人口動態統計によると、確定数(2023年5月~12月)と確定前の概数(2024年1月~4月)を集計した結果、新型コロナウイルスの死者数は3万2576人となり、そのうち約97%が65歳以上の高齢者でした
新型コロナウイルスは、ウイルスが次々と変異し高い感染力を持ちながらも病原性があまり低下せず、基礎疾患のある高齢者が感染して亡くなるケースが多いとされています
第57回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会 資料
こちらは岐阜県データになりますが、令和5年5月7日まで新型コロナ感染症による死亡者については全数を把握し、かつ基礎疾患等の情報を収集して集計しており、上記は令和3年12月27日~令和5年5月7日(オミクロン株流行期)におけるもので、令和5年10月31日時点の集計になります
60歳未満の者については、死亡者数は少ない一方で、死亡者の大部分を65歳以上の者が占めていることがわかります
高齢者・重症化リスクの高い方のコロナワクチン定期接種
2024年10月1日からの新型コロナワクチンの定期接種の神戸市における対象者は、接種日時点で神戸市民で、以下のいずれかに該当する方です
- 65歳以上の方
- 60歳から64歳で心臓、腎臓、呼吸器の機能またはヒト免疫不全ウイルスにより免疫の機能に障害のある方(いずれも身体障害者手帳1級所持または同程度の方)※障害により身の回りの生活を極度に制限される方や、日常生活がほとんど不可能な方が対象となります
高齢者・重症化リスクの高い方のコロナワクチン定期接種 (神戸市ホームページ)
重症化を防ぐためのワクチン
新型コロナウイルスのワクチンには、定期的に接種できるものが5種類あります
- ファイザーとモデルナのワクチン:これらは「mRNAワクチン」と呼ばれるもので、以前から使われていましたが、新しい変異株「JN.1」にも対応しています
- 武田薬品のワクチン:これも以前から使われているワクチンで、新しい変異株「JN.1」に対応しています
- 第一三共のワクチン:今回新しく承認されたもので、ファイザーやモデルナと同じ「mRNAワクチン」です。ただし、ファイザーやモデルナが「スパイク蛋白質」という部分全体を狙うのに対し、第一三共のワクチンはその中の特定の部分(RBD)だけを狙います。でも、基本的には大きな違いはありません
- Meiji Seikaファルマのワクチン:これも新しく承認されたもので、「自己増幅型mRNAワクチン」という新しい技術を使っています。この技術により、体内で長い期間スパイク蛋白質を作り続けることができ、より長く効果が続くと期待されています
定期的に接種できるワクチンは、すべて新しい変異株「JN.1」に対応しています
- JN.1は、2021年末に広がったオミクロン株の子孫で、オミクロン株のBA.2という亜系統から生まれた変異株です
- KP.3という変異株が現在主流で、これはJN.1から派生したものです
つまり、今主流の変異株KP.3に近いJN.1に対応したワクチンなので、接種することで感染や重症化を防ぐ効果が期待できます
ただし、オミクロン株が主流になってからは、ワクチンで感染を防ぐ効果は以前ほど高くなく、数ヶ月で効果が低下します
そのため、感染を完全に防ぐのは難しいです
一方で、重症化を防ぐ効果はオミクロン株が主流になってからも続いており、接種後半年程度は効果が持続します
最近の新型コロナワクチンは「重症化を防ぐためのワクチン」と認識されています
このため、今回の定期接種は重症化リスクの高い高齢者が対象となっています
つまり、ワクチンに対してこれだけ色々な意見がある中で、高齢者が定期接種になっているということは、専門科の先生方が『高齢者の方には重要なメリットがありますよ』とお知らせしてくれているんですね
あえて高齢者だけが対象になったということ、予算の問題だけではないということを知っておいてください
副反応について
新型コロナワクチンの副反応には、接種した場所が腫れたり痛くなったりすることや、発熱、だるさ、頭痛などがあります
- mRNAワクチン:従来のワクチンよりも副反応が多い傾向があります
- 組み換えタンパクワクチン:mRNAワクチンよりも副反応が少ないと報告されています
また、まれにアナフィラキシーという重いアレルギー反応が起こることがありますので、接種後30分くらいは体調の変化に注意してください
ワクチンいつ打つ?今でしょ!
ワクチンをいつ接種すれば良いかについても正解はありませんが、過去の流行を考えると、冬に大きな流行が来ることが予想されます
具体的にいつ流行するかは予測が難しいですが、12月、1月、2月のいずれかになるかもしれません
重症化を防ぐ効果は接種後半年程度続くと期待されるため、流行直前に接種するよりも、早めに接種して備えておくのが良いでしょう
定期接種の対象となっている方は、ぜひ接種を検討してください
日本消化器病学会 専門医
日本消化器内視鏡学会 専門医
日本消化器内視鏡学会 上部消化管内視鏡スクリーニング認定医
日本消化器内視鏡学会 下部消化管内視鏡スクリーニング認定医
日本炎症性腸疾患学会
日本内科学会 認定内科医