高血圧と便秘のほんとはふか~い関係

目次
高血圧と便秘:見過ごせない2つの健康問題
高血圧と便秘は、共に多くの人が抱える健康問題ですが、実はこれら2つが相互に関連していることをご存知でしょうか?
高血圧は血管や心臓の健康に影響を及ぼす深刻な疾患であり、一方で便秘は単なる不快感だけでなく、排便時のいきみによって血圧の一時的な上昇を引き起こすことがあります
本記事では、高血圧と便秘の関係、降圧薬が便秘に与える影響、さらには双方を改善するための非薬物療法について詳しく解説します
高血圧と便秘の密接な関係

便秘は血圧にどのように影響を与えるのでしょうか?
便秘が高血圧に影響を与える仕組みのひとつとして、排便時の「いきみ」による血圧の一時的な上昇が挙げられます
この短期的な影響は、長期的に見ても体に負担をかける場合があります
いきみは腹圧を高め、結果として心臓に負担をかける可能性があります
この一時的な血圧上昇が頻繁に繰り返されると、脳卒中や心臓発作といった深刻な合併症のリスクが高まります
さらに、便秘による腹圧の増加は血管にストレスを与え、血液循環に悪影響を及ぼすこともあります
このため、便秘は単なる消化器系の問題として片付けるのではなく、血圧管理の観点からも注意が必要です
また、高血圧治療に使用される降圧薬の中には便秘を引き起こす可能性があるものもあります
降圧薬が便秘に与える影響
降圧薬にはさまざまな種類がありますが、その中でも便秘を引き起こしやすい薬剤として「カルシウム拮抗薬(Ca拮抗薬)」や「利尿薬」が挙げられます
特に、Ca拮抗薬の中で広く使用されるジヒドロピリジン系薬剤(例:ニフェジピンやアムロジピン)は、便秘の原因として知られています
一部の研究によると、ニフェジピンでは便秘の発生率が高い一方、アムロジピンでは比較的低い頻度であるとされています
Long-acting nifedipine in the management of the hypertensive patient
このため、便秘が副作用として現れた場合は、薬剤の種類を変更することも選択肢として考えられます
降圧・便秘改善・減薬が期待できる非薬物療法
方法 | 降圧効果 | 便秘改善 | 備考 |
---|---|---|---|
食物繊維の摂取 | 軽度あり | あり | キウイやプルーンが便秘に良く、降圧効果も期待 |
Mgを含むミネラルウォーターの摂取 | 軽度あり | あり | 脱水改善が期待できる可能性あり(エビデンスなし) |
減酒 | あり | – | 飲酒量と便性との関連を示す研究あり |
有酸素運動 | あり | あり | 速歩やスロージョギングなどの運動が推奨される |
高血圧と便秘を同時に改善する非薬物療法
薬物療法だけでなく、生活習慣の改善も高血圧と便秘の両方に有効です
以下は、効果的な非薬物療法の例です
- 食物繊維の摂取:野菜や果物、全粒穀物を中心とした食事は、便秘改善に加え、降圧効果も期待できます
- 水分補給:適切な水分摂取(1日1.5〜2リットル)は、便秘予防に役立つだけでなく、脱水を防ぐことで高血圧の管理にも貢献します
- 有酸素運動:毎日30分以上のウォーキングやスロージョギングなどは、血圧を下げ、腸の活動を促進します
- 減塩食の推進:高繊維でミネラル豊富な減塩食は、高血圧管理と便秘改善の両方に寄与します
便秘が高血圧管理に与える影響
便秘そのものが血管の健康に影響を及ぼすことも考えられます
便秘の慢性化は腸内フローラ(腸内細菌叢)のバランスを崩し、慢性炎症を引き起こす可能性があります
慢性炎症は血管機能を低下させ、結果として血圧のコントロールを難しくする要因となる可能性があるのです
さらに、便秘に伴う精神的ストレスも高血圧に間接的な影響を及ぼします
ストレスは交感神経を活性化し、血圧を上昇させることが報告されています
したがって、便秘の管理は単に消化器系の問題を解決するだけでなく、全身の健康維持や高血圧のコントロールに寄与する重要な取り組みとなります
まとめ:高血圧と便秘のバランスをとる健康管理
高血圧と便秘の関係を理解し、適切な治療と生活習慣改善を行うことで、どちらの症状も効果的にコントロールできます
薬物療法と非薬物療法を組み合わせることで、薬の副作用を最小限に抑え、健康的な日常生活を送ることが可能です
便秘のお薬の種類も増えてきましたので、わたしたち大腸専門家(巷では”うんこ先生”なんて言われています)ならではの使い分けもあります
お困りの方はお気軽にご相談ください
また、ただの便秘と思っていたら大腸がんやポリープが邪魔していることもありますので、一度は大腸カメラもご検討ください

日本消化器病学会 専門医
日本消化器内視鏡学会 専門医
日本消化器内視鏡学会 上部消化管内視鏡スクリーニング認定医
日本消化器内視鏡学会 下部消化管内視鏡スクリーニング認定医
日本炎症性腸疾患学会
日本内科学会 認定内科医