これって潰瘍性大腸炎かもしれない…

わたしが専門としている潰瘍性大腸炎は、特別な症状のこともあれば、気にもとめない症状のこともあります

いろいろな症状の中でもやはり出血は皆さんにとってインパクトの大きな症状なのではないでしょうか

今の時代、スマホがあれば何でも調べられてしまいますが、それだけ恐怖心を煽っていることもあります

今回は、潰瘍性大腸炎を疑う症状について解説します

早期診断と治療介入がキーポイント

潰瘍性大腸炎は大腸に原因不明の慢性炎症を起こす病気で、最新の疫学調査では30万人超と報告されています

小児から高齢者まで幅広い年齢層で発症する可能性があるため、わたしたちも常に念頭に置く必要がある病気の一つになりました

比較的若い年齢層で発症することが多く、進学、受験、就職、結婚などさまざまなライフイベントに影響する可能性があります

ですので、この疾患で最も重要なことは、ライフイベントに支障が出ないように、早期診断と治療開始をするです

持続性または反復性の粘血・血便

初期症状には下記のようなものが挙げられます

  • 粘血便
  • 下痢
  • 腹痛
  • しぶり腹
  • 発熱
  • 食欲不振
  • 体重減少
  • 倦怠感

多くは胃腸炎でもおかしくないような症状ですが、粘血便、つまり出血は気にすべき症状の一つです

以前に、便潜血検査のお話もしましたが、便潜血検査陽性となった患者さんは、大腸カメラを受けて何もなかったとしても、その後の健康を気にするようになり、最終的には死亡率が低下するのではないかとも言われています

日本での診断基準でも『持続性または反復性の粘血・血便』というのが一つのキーワードになっています

難治性疾患政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」

他の病気の除外が重要

しかし、症状が持続するからといって、必ず潰瘍性大腸炎なわけでもありません

鑑別すべき腸炎は以下のようなものが挙げられます

  • クローン病
  • 腸管ベーチェット病
  • 細菌性赤痢
  • アメーバ性大腸炎
  • サルモネラ腸炎
  • カンピロバクター腸炎
  • 腸結核
  • クラミジア腸炎
  • 放射線性大腸炎
  • 薬剤性大腸炎
  • リンパ濾胞増殖症
  • 虚血性大腸炎

食中毒のような一般的な胃腸炎の後に引き続き起こる過敏性腸症候群でも同じような症状になることもあります

ですので、私が日常診療で一番重要視している『問診』がここでも非常に重要な役割を果たしています

症状が出始めた時期やタイミングなど色々と確認事項があります

大腸カメラは一番の重要ポイント

問診は重要ですが、問診だけで診断できるわけでも、否定出来るわけでもありません

最終的には、大腸カメラが診断のポイントになります

もちろん、特徴的な内視鏡所見を見逃さず、しっかりと診断するということは当たり前ですが、非常に軽微な所見も見逃さず、しっかりと初期に診断をすることが重要だと私たち炎症性腸疾患(IBD)の専門家は考えています

発症初期は内視鏡を受けた方が良いのか悩むこともあると思いますし、内視鏡をしても診断が困難なこともあります

しかし、繰り返しますが、重要なことは潰瘍性大腸炎の最初のサインを見逃して、ライフイベントに影響を与えることです

しっかり診断した後に治療を開始しますが、病気の診断が遅れることで、選択できる治療が変わってしまうこともやっかいなことの一つです

最初であれば1-2週間で症状改善出来る程度の病気の活動性だったのに、のんびりした間に入院が必要な状態になってしまうこともあります

安心するための大腸カメラ

大腸カメラは診断のためだけではありません

異常が何もなければ、病気がなかったという安心感を得ることも出来ます

一方で、胃腸は非常に面倒な臓器なので、何かあるかもしれないという不安だけでも症状が出てくることもあります

『症状があるけど、たぶん大丈夫』

『大丈夫だと思いたいけど大腸カメラも心配』

検査を受けた方が良いか悩まれている方は、一度ご相談頂ければ幸いです